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講演レポート『ポジティブ・アプローチで描くセカンドライフ』

なかの生涯学習大学の合同公開講座で、『ポジティブ・アプローチで描くセカンドライフ』をテーマに代表の安部博枝が講演を行いました。

 2018年7月19日、なかの生涯学習大学の合同公開講座(中野区・中野区教育委員会主催)において、代表の安部博枝が講演を行いました。なかの生涯学習大学は、中野区在住の55歳から79歳を対象とし、仲間づくりや地域活動を目的に、現代社会の課題や地域の現状などを学習する3年制の講座です。会場の「なかのZARO本館」大ホールには、猛暑にもかかわらず受講生および一般聴講者約500名が参加し、変化の激しい時代の中でどのようにセカンドキャリアをデザインし、超高齢化社会を自分らしく生きていくかという話に、熱心に耳を傾けてくださいました。以下に、当日の講演内容の要約をご紹介します。

ポジティブ・アプローチとは

前向きで楽観的に考える

 みなさんは自分の自慢できることを3つあげられますか。「1つなら言える」とか、「苦手なことだったらいくらでも話せる」という方が多いのではないでしょうか。

 私たちの世界には得意なことや楽しい出来事と、同じくらい苦手なことや辛い出来事があります。それがたとえば同じ数あったとしても、私たちは辛い出来事のほうにフォーカスしがちです。もともと人間は非合理で悲観的な思考を持っているのです。

 これを合理的で楽観的な考え方に修正し、良い方向、自分の得意なもの、楽しいことにフォーカスしていくと、人生が前向きに楽しくなるというのがポジティブ・アプローチの考え方です。

セカンドキャリアをデザインする

キャリアデザインとは

 老後のマネープランを立てている方は多いと思いますが、時間の使い方について計画的に考えている方は案外少ないのではないでしょうか。お金は足りなければ稼ぐことができますが、時間は有限で増えませんから、ある意味お金よりも貴重です。この限りある時間をどう使うかを考えるのが、キャリアデザインです。

 

今は無理でも諦める必要はない

 社会の変化が激しい世の中です。5年先あるいは1年2年先すらどうなっているか予測がつきません。だからこそ、やりたいことを「今はできないから」との理由で諦めるのはもったいないことです。私がアビライトを立ち上げられたのも、ITが発達して自宅でもどこでも仕事ができる環境になったからです。私が専業主婦だった15年ほど前、子育て中の女性は、どうしても「働ける場所」や「働ける時間」が限られてしまうことを感じていました。でも「これをやりたい」と思い続けていると、時代のほうが追いついてきます。例えば「体力がないから難しい」と思っていることでも、将来は動きを補助してくれる技術や体力増進法などが発達して、できるようになる可能性があることを、ぜひ頭に入れておいてください。

 

快適な介護空間をめざして

 ここで、これから起こり得る社会の変化について、研究者の立場から少しお話します。

人生100年時代と言われ超高齢化がますます進むなか、気になるのが「何歳まで健康に暮らせるか」です。私が所属する明治大学の研究所(先端数理科学インスティテュート)では、さまざまな人類・社会の課題に対して科学的視点から研究していますが、そのテーマの一つに「快適な介護空間の構築」があります。超高齢化社会の進行により、介護が避けられないものであれば、介護自体をより快適にしていこうというポジティブ・アプローチです。

 

 ITやAIの活用で変わる介護の現場

 IT(インターネット技術)やAI(人工知能)を活用した介護支援(食事や排泄、入浴など)、自立支援(リハビリ、移動アシスト)、コミュニケーション支援(見守り、会話など)、介護空間の設計やケアプランの作成など研究も進んでいます。私自身はAIによる表情認識を利用して、疲労度や快適度を計る研究に取り組んでいます。介護する方は、疲れていても「大丈夫です」と頑張りすぎる人が多く、体を壊してしまいがちです。そこで、表情から疲れを客観的に読み取って休息を勧め、あるいは体調に合わせて室温を調整するなど「快適な介護空間」の実現を目指しています。また、明治大学で私がもう一つ所属する自動運転社会総合研究所では、自動車の自動運転に関わる法律や保険など、社会システムのあり方を研究しており、自動運転による救急搬送や、高齢者の移動サポートなどが可能な世の中になることを目指しています。

 このように介護一つとっても、社会は常に変化していきます。その動きを予測し、時代への適応力を高めておくことも、セカンドキャリアをデザインする上で大切なことです。

自分を知り、満足できる生き方を探求する

自分自身を深く知る

 満足できる生き方を探求するには、自己理解を深める必要があります。私たちが自分を知るには「3つの鏡」が必要だと言われます。そのひとつが、自分自身で考える『自己洞察』で、2つ目が「〇〇さんってすごく明るいわね」、「人をまとめるのが上手だからリーダーやってくれる?」など、人から言われて気がつく『他者からのフィードバック』。そして3つ目は、「エゴグラム」などの統計的に証明された方法による『心理アセスメント』で、自分自身の傾向を客観的に知ることができます(※)。

 

得意なことや楽しいことにこだわる

 みなさんの多くは、会社を退職してからご自分自身の社会に対する役割が大きく変化したのではと思います。何かを学んだり地域の中で活動したり、あるいは介護をするなど、自分の中での役割が変わってきている時期にあります。これまでの会社というコミュニティにおける部長、課長などの役割がなくなり、生きがいを失ってしまったというかたも少なくありません。みなさんのように新たなコミュニティに参加して学びを深めて地域で活躍し、世界を大きく広がるのを楽しむことも、セカンドライフのためには必要なことです。

 そして、いままで仕事の上で苦手なことや嫌なことも、十分されてきたんじゃないかなと思います。これからは少し解き放たれて、セカンドライフは自分が得意なことや楽しく夢中になれることにこだわってみてはいかがでしょうか。

 

満足できるセカンドライフを送るには

  私たちの人生は、「自分のあり方」でどのようにも作っていけます。心構えひとつで楽しくも辛くもなるのです。ぜひポジティブ・アプローチによって、楽しく明るいセカンドライフをデザインしていただければと思います。

 

(※)「エゴグラム」に関しては、『自分のことがわかる本―ポジティブ・アプローチで描く未来』(安部博枝著・岩波ジュニア新書)で詳しく解説していますので、興味のある方は是非ご一読ください。

 

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