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コラム

2020年8月号:JAVADA情報マガジン【全国版】連載コラム”フロントライン”寄稿しました

中央職業能力開発協会様 メールマガジン「 JAVADA情報マガジン【全国版】」 連載コラム”フロントライン〔能力開発実践者からの報告〕”

コロナ禍で変化するキャリア

~テレワークの現状と課題を実践者の視点から~ 第1回 「働き方」の変化

 新型コロナウイルス感染症により、社会環境が激変し、企業はテレワークを始めとする働き方の変化を求められ、オンラインによるコミュニケーションや教育が一気に浸透しました。まさに「変化」への「適応」を求められる今、一層のキャリア支援が求められていると感じています。そこでここでは、ここ数か月のトピックス的な要素も含めて、企業へのキャリア支援を行う実務家としての視点とコミュニケーションを研究する研究者の視点から、コロナ禍で変化する「働き方」「生き方」について話題を提供できればと思います。

 第1回目は「働き方」の変化について取り上げてみようと思います。働き方の変化というと、外出自粛要請や三密回避のために企業におけるテレワークの導入が一気に進んだことが挙がるのではないでしょうか。令和元年9月末時点の総務省の調査結果をみると、通信環境の進化のスピードと比較してテレワーク導入の伸び率はさほど大きくないことがわかります。分母が違うため正確には比較できませんが、14,000社以上の調査を元にした令和2年6月時点の調査結果を見ますと、その間に約6割の企業がテレワークを導入したことが示されています。この中で興味深いのは、「新型コロナの影響で実施したが、現在はとりやめた」企業が約3割程度存在することです。社内環境の整備の課題や業務との相性などもあることは考えられますが、令和元年のデータと比較して新型コロナの影響がある以前より導入していた約2割の企業を除くと、今回のコロナ禍でテレワークを新規に導入し現在も継続している企業は1割程度ということになります。企業としては「やってはみたが継続するほどの効果は感じられなかった」というのが本音のところでしょうか。

 

出典:総務省「令和元年通信利用動向調査」(2020.5.29公表)

 

出典:(株)東京商工リサーチ「第6回新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(2020.7.14公表)

 

 またテレワーク導入へのハードルとして「情報漏えいが心配だから」という理由も上位に挙がっています。私が代表を務める株式会社abilightは、多様なキャリアを支援するため、働く場所や時間に制限をもつメンバーで創業して、以来5年間テレワークによる働き方を実践してきました。総務省は平成27年度から、テレワークの導入・活用を進める企業・団体を「テレワーク先駆者」として選定し、その中から十分な実績をもつ企業などを「テレワーク百選」として公表しているのですが、当社は、テレワークに関する就業規則が定められていることや、全社員がテレワークを実施していること、クラウドを活用したプロジェクト単位での働き方などが認められ、平成30年度の「テレワーク先駆者百選」企業に選定していただきました。名だたる企業様と一緒に名を連ねて、私たちの小さな取り組みが評価されたことは大きな励みとなりました。

 ※総務省 報道資料「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」等の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000218.html

 

 当社での情報漏えいの対策には、コンサルティング会社としてお預かりする顧客資料の取り扱いを中心とする社内文書の運用ルールを決め、ツールの最適化を図ってきました。当初は何をどこまでやれば安全なのか、という視点で専門家の方に指導を仰いだり、コストをかけてフレームワークを構築することに重点をおいたりしていました。ただ、そこで感じたのは、どんなに高いセキュリティに守られたクラウドシステムを利用しても、結局は利用する側の意識が伴わなければリスクは避けられないということです。これまでのキャリアが多様なメンバーの中には、前職の影響から情報セキュリィティへの意識が非常に高い人もいればその逆もいたのです。考えてみれば当たり前のことではあるのですが、今は運用するメンバーの情報セキュリティ意識向上や、業務内容に依存することなくメンバーの適性に合わせたセキュリティ権限を付与することでリスク回避に取り組んでいます。

 

出典:総務省「令和元年通信利用動向調査」(2020.5.29公表)

 

 一方、働く側の変化はどうだったのでしょうか。通勤の負荷が減ることや自分のペースで仕事がしやすくなる、というメリットを実感しつつ、様々なニュースでも取り上げられたように「在宅で子供を見ながらの仕事の効率は思っていたより上がらない」という声や、逆に「仕事とプライベートの境がなくなり、夜中まで仕事を続けられてしまうことでかえって業務量が増えた」等のデメリットも挙げられていました。

 これは自分自身が実感していることでもありますが、生産性には時間的、そして物理的な制約も必要とされるということです。子育て中の社員の生産性の高さについては様々な調査で示されていますが、絶対に残業できないから集中して効率的に仕事を進める、という意識がなくなると、どうしてもだらだらと仕事をしてしまいがちになります。この辺りのセルフコントロールは、当社のメンバーを見ていても切り替えが上手く時間を効率的に使える人とそうでない人の差が大きく分かれるように感じます。これは、お子さんが小さく保育所に預けている、ダブルワークで働ける時間が限られる、という各々の置かれた環境もあるのですが、ITツールを使いこなそうとするマインドとスキルの差も大きいように思います。その結果、同じ業務を振り分けた時にかかる時間が大幅に違ってくるため、業務のアウトプットに対する評価だけで報酬と連動すると、モチベーションの差が生まれ、どうも上手くいかない、ということが起きました。職場にいれば、勤務時間もある目安にはなり、その人がどのような状況で仕事をしているかは何となく受け取れるものなのですが、テレワークになると、それはどうしても難しくなってしまい、このようなことが起きたのだと思います。テレワークでの仕事はどうしても結果主義になりがちですが、このことを通してプロセスにこそ気を配らないといけないと気付かされました。

 コンサルテーションに必要な調査も膨大な時間がかかる割にアウトプットとして示せるものが少なかったりするので、アウトプットのみの評価だけでなく、時間給での支給も取り入れることにしてみました。しかし、これも人によっては時間をカウントすることで気兼ねなく時間をかけられない、と考えることがわかり、現状ではメンバーの希望をききながら、それぞれのワークライフスタイルに合わせた評価と報酬の組み合わせを取り入れています。「テレワーク先駆者百選」に選定してはいただきましたが、当社もテレワークにおけるメンバーの「働きやすさ」や「モチベーションの維持向上」には、今も試行錯誤を続けています。

 

 このようにテレワークには課題もありますが、やはりこの新型コロナの影響をほとんど受けることなく業務を遂行できたことに関しては、今後発生し得る自然災害などに対するリスクマネジメントの安心材料にもなりました。しかしながら、様々なツールを活用しながらテレワークを実践し定期的なオンラインミーティングでコミュニケーションをとってきた自分たちでも、一度もリアルに顔を合わせることなく仕事を進めた2ケ月を振り返りますと、仕組みだけでは補完できないコミュニケーション上の課題も感じました。

 その間、印象に残ったニュースがありました。『あるITベンチャー企業がこの機に全ての業務をテレワークに移行し、都内の事務所を解約することにした。生産性や経費削減によって業績は上がったが、あらたなアイデア創出やイノベーションが行われなくなり、仕事がルーチン化してしまったことに危機感を感じて事務所を再契約して従来のスタイルに戻した。』というものです。オンラインでいつでも繋がれる環境でコミュニケーションをとることはできても、それは物理的に同じ空間で議論を交し合う行為とはプロセスもアウトプットも異なる、ということの表れではないかと感じました。

 

 このようなテレワークによる働き方の課題として、技術面や労務人事面とともに、組織の風土や文化などを反映した社内コミュニケーションの在り方の変化も挙げられると思います。表情を研究テーマとする者としては、マスクをしながらの業務が日常となった今、その課題も実感するところです。この話題については、次号以降触れていきます。

 

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