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コラム

H29.10月号:きゃりあ形成支援専用メールマガジンに寄稿しました

厚生労働省委託事業 「キャリア形成支援サイト」 ~きゃりあ道~

「キャリア支援の必要性と効果について」をテーマに、代表安部が3回にわたり連載します。 第1回目は、ダイバーシティ推進企業で多様なキャリアパス設計を行った事例と、アンケートから見る若年層のキャリアの意識についてご紹介しています。

きゃりあのヒント キャリア支援の必要性と効果について 第1回

10月から、記事を書かせていただくことになりました株式会社アビライトの安部博枝と申します。今回も含めて3回ほど記事を担当させていただくことになりましたので、まずはキャリア支援の必要性を訴える背景ともいえる自分自身のキャリアについて簡単にご紹介させていただいてから、本文に入りたいと思います。

私は、約15年間自動車メーカーの総合研究所、本社でIT部門の人材育成や広報などを担当しました。製造業で男性優位の組織でもあり、当時はまだ育児休暇を取って会社に戻る女性は少なく、両立するための制度はあっても職場の理解はまだ低かったように記憶しています。

少しすると組織がグローバル化へと大きく変革が始まりました。本社がグローバルな機能へとシフトしていく中、子育てとの両立が困難になり、退職をして専業主婦になりました。その時代に、再就職を模索してパート、派遣社員、在宅ワークなど様々な仕事を体験しました。

専業主婦時代、周囲には働く意欲や能力もあるのに働く場所のないママ友がたくさんいました。時間や場所の制約がなければもっと多くの方が活躍できる社会になるのでは、という長年の思いを実現するために2015年に株式会社アビライトを起業しました。私自身も研究との両立ですが、同じ様に子育てなどの制約のあるメンバーとテレワークを中心とした働き方でいきいきと「働く」ためのキャリア開発を軸とした人材育成のご支援を行っています。

これまで10年にわたり、コンサルティングを通じて多くの企業を観て、研修で様々な立場の方々と接してきた経験から、なぜ企業が従業員のキャリア形成を支援する必要があるのか、導入することによるメリット、またその難しさなどについて、事例をベースに現場の目線でお伝えできればと思っています。

1.あらためてキャリア形成支援とは

キャリア支援に関してお伝えしていく前に、ここでの定義をしておきたいと思います。ここでは、キャリア支援を「従業員個人が、企業で通用する実践的職業能力を身につけていくことを事業主等が支援すること」とします。この定義は、中央職業能力協会が主催するCADS&CADIセミナーでも同様にお伝えしているものです。

近年は、働き方改革を背景にワーク・ライフバランスも重要視されるようになり、企業、従業員ともに意識の変化も感じられるようになってきました。仕事も大事にしながら私生活も充実させる、私生活の充実が仕事に還元される、というプラススパイラルの重要性が認識され、職場でも浸透しつつあるように感じます。

これまでは、私生活の事情は仕事には関係がない、というような意識もありましたが、最近ではそうした事情も企業側が積極的に把握しながら、仕事の配分や人材配置にいかされるようになってきています。

例えば、これまで研修では、育児による時短勤務の方は、途中から参加し早めに抜ける、ということがスタンダードでしたが、今は時短勤務の方に合わせたスケジュールが組まれるようにもなっています。

そして企業内での研修も、かつては仕事のスキルを身に付けるための実務に直結する内容が中心でしたが、最近は内的キャリア(働きがい、仕事の意義、価値観などの主観的な側面)開発に繋がるキャリアデザイン研修などを積極的に取り入れ、従業員のモチベーションアップを考える企業が増えています。

変化の激しい時代、企業が終身雇用を保障できない今、従業員が自律したキャリア形成を行うために職業上の基礎体力をつけるための支援を行う必要が、義務ではなく求められていると感じます。

2.キャリアパスを明確にすることで従業員のベクトルを一つに

ご支援をさせていただく中で中小企業様の場合は、明確なキャリアパスをお持ちでないところが多いように感じます。職位はあり階層は存在しているのに、その職位を得るための道筋が示されておらず、何を頑張ったら自分がそこに辿りつけるのかを従業員の皆さん自身が分かっていないのが実情です。

また人事評価の仕組みはあっても、評価や面談が適切に機能していないことも多く、不満が内在化していることも多いように思います。

「人材の定着率が低い」「従業員のモチベーションが低い」「主体的に動ける人材がいない」「採用がうまくいかない」など、人材に関するお悩みは一見様々のように見えますが、コンサルティングをして課題を分析していくと、多くの場合、組織の求める人材のあるべき姿やキャリアパスが示されていない、ということが挙がってきます。

これは、家庭における教育方針のようなもので、「明るく誰とでも仲良くできる子に」なのか「個性を伸ばして集団に埋没しない子に」なのか、企業ごとにそれぞれ違っているはずですが、そこが明確になっていない場合や、明文化がなされておらず、共通の認識を持てていないケースが多いと感じています。

まずは、従業員自らが、この組織で求められている役割をしっかりと認識すること、仕事の頑張りを適切な方向に振り向けることができるようになることが重要であると考えています。

3.企業の特性や目的に応じた多様なキャリアパス設計

世田谷区の区民会館や区民センター、区立公園、美術館等の公共施設や、施設に併設されたレストラン・喫茶等の管理運営を受託している世田谷サービス公社様の事例をご紹介させていただきたいと思います。現在、弊社と二人三脚で人材育成の取り組みを行っている同社では、従業員約800名のうち、非正規の雇用形態の方が正社員の約15倍近くいらっしゃいます。また、積極的に地域の方、高齢者、障がい者を採用されており、60歳以上雇用率約53%、女性雇用率約53%、さらに障がい者雇用は法定雇用率29%(全体の人数比11%)で、法令基準の2.0%をはるかに超えるダイバーシティ推進企業様でもあります(平成29年3月末時点)。

ここに働く全ての人を大切にしたい、との想いから、施設を担う皆さまのポテンシャルを引き出し、会社の顔としてやりがいをもっていただくための取り組みとして、正社員だけでなく、短時間のパートタイムなどの非正規社員も含めた全ての人を対象としたキャリアパス制度を設計し、教育体系を整備しました。

施設でご利用者と直接接するのは、そうしたパートや非常勤の皆さまであり、中長期の人材育成計画には、長くやりがいをもって働いていただくための研修教育や表彰制度など、様々な施策を取り入れました。

施設管理の仕事は、施設の受付から、清掃、公園管理など多岐に渡りますが、研修で接してみると定年退職後の皆さまや、子育て中のママが多くいらっしゃいます。皆さまこれまでに豊富な経験があり、高いポテンシャルをお持ちのことに驚かされました。皆さま会社からの期待を感じ、意欲高くお仕事に取り組まれています。

高齢者、女性、障がい者の皆さまのこうした潜在的なパワーを眠らせておくのは本当にもったいないと思っています。

4.時代の変化とともに意識の変化も

最後に株式会社リクルートキャリアが実施した2016年3月卒業予定の大学生、大学院生約1万人を対象に実施したアンケート結果から「貢献と報酬の関係」の項目を抜粋して示します。

株式会社リクルートキャリア就職みらい研究所「働きたい組織の特徴(2016年卒)」(2015年7月30日)

興味深いのは、「個人の生活をサポートする制度(休暇制度や各種手当など)を充実させる代わりに、給与は低い」が「個人の生活をサポートする制度はないが、給与は高い」よりも全スコアで上回っていることです。これは、まさにワーク・ライフバランスの重視を重んじる傾向を表していて、私が若年層の研修で感じる肌感覚と一致しています。

「入社直後の給与は低いが、長く働き続けることで後々高い給与をもらえるようになる」もかなりスコアが高くなっていますが、これは会社選びの際に長く勤められそうな会社、という要素が重要視されている、ともいえると思います。

そのように安定志向を反映した結果の中で、「自分のキャリアステップは自分で考え、実現に取り組むことが求められる」が「移動や配置を通じ、会社が個人のキャリアステップを考えてくれる」よりもスコアが高いことが特徴的です。自分のキャリアは自分で決めたい、という意識の表れと感じます。

従業員一人ひとりが長期的なキャリアビジョンをもち、いきいきとやりがいをもって働き続けていただくためにも、企業には自律したキャリア形成支援が求められています。そうしたフィールドを整えることも魅力ある組織づくりには不可欠であると考えています。

次号では、働く側からのキャリア形成についてのヒントをお伝えしたいと思います。

 

 

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