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コラム

H29.12月号:きゃりあ形成支援専用メールマガジンに寄稿しました

厚生労働省委託事業 キャリア形成支援専用メールマガジン ~きゃりあ道~
きゃりあのヒント

最終回となる本号では、キャリア支援におけるメンターの重要性についてお伝えできればと思います。組織において、従業員のメンタル不調と生産性の関係がよく取り上げられますが、働く人にとっては、メンタル不調まではいかなくとも悩んだり迷ったりすることは多かれ少なかれあるはずです。いきいきと「働く」上で心身ともに健康であることは、まず大前提です。そのためのメンターの役割について整理します。

1.メンターとは

まず「メンター」について定義しておきたいと思います。「メンター」は、ギリシア神話に登場する賢者「メントール」が語源と言われ、良き助言者、指導者という意味をもっています。メンターから支援を受ける人は「メンティー(あるいはプロテジェ)」と呼ばれています。

メンターは、メンティーのスキルアップや人間関係の悩みだけでなく、プライベートも含めた悩みに対し、その解消を対話によって促し、そしてメンティーの成長を支援する役割をもちます。すなわち、キャリア形成を行う上でのメンターとは、メンティーのロールモデル(お手本)となり、常に味方になってくれる人をさします。

 

2.なぜメンターが必要なのか

研修では、休憩時間や終了時間にご相談を受けることが多々あります。管理職研修では、部下のマネジメント上のお悩みや、新人研修のフォローアップでは、期待していた仕事に就けていない、という不満もでます。女性向けのキャリア研修を実施した際には、終了後に1時間以上もお待ちいただきながら、順番に個別のご相談を受けたこともありました。

このように「わざわざカウンセリングにいくほどではないけれど、今のしんどい状況を聴いてもらいたい」「悩んでいることに対して背中を押して欲しい」という思いを持っている方は、潜在的に数多く存在していると思います。社内に相談できる上司や先輩はいると思いますが、近すぎて本音を話しにくい、或いは当事者との人間関係が問題の本質にあるような場合は、悩みを相談できなくて当然です。その結果、様々な悩みや疑問が内在化してしまうような傾向にあるように思えます。

前号でも述べましたが、1990年代以降、企業を取り巻く環境が激変し、バブル崩壊とともに、終身雇用、年功序列といった人事制度から、アウトソーシングによる組織のスリム化や成果主義に移行しました。その結果、目標達成のために自分自身のことで精一杯で余裕がなくなり、かつてのような面倒見の良い先輩や上司が、少なくなったともいわれています。仕事以外の場での交流も減り、組織内での人と人との繋がりが希薄になることで、精神的な孤立を招いている組織も多いのではないでしょうか。

そのように精神的に孤立したり、悩みを抱えたりしたままの状態で仕事をすることは精神的につらいだけでなく、仕事のパフォーマンスにも影響します。特に経験の浅い新入社員などは、社会と組織に適応する過程で、小さなことでも大きな悩みになりやすく、そうした状態を長い間放置すれば、メンタル不調や早期離職に陥ってしまうことも懸念されます。そのような状況を未然に防ぐためにも自分の味方となり、安心して話のできる相手や場所、すなわちメンター機能が必要になるのです。

 

3.メンター制度の難しさ

研修の中で「皆さまがキャリアの先輩としてお手本にしている方が身近にいますか」と尋ねることがあります。30名程度のクラスで良くて2割、少ない時にはほんの数名しか手が上がらないこともあります。残念なことに多くの場合、身近にロールモデルになる人がいない方が多いように見受けられます。

女性になるとそれがさらに顕著になります。平成28年に女性活躍推進法が施行され、女性活躍推進を積極的に行っている企業を認定する「えるぼし認定」の評価項目の一つに以下の「管理職比率」があります。

(1)管理職に占める女性労働者の割合が別に定める産業ごとの平均値以上であること
又は
(2)直近3事業年度の平均した「課長級より1つ下位の職階にある女性労働者のうち課長級に昇進した女性労働者の割合」÷直近3事業年度の平均した「課長級より1つ下位の職階にある男性労働者のうち課長級に昇進した男性労働者の割合」が0.8以上であること(厚生労働省)

この基準を満たすためのご支援もおこなっていますが、これまで社内に女性の管理職が存在しなかった場合や、子育てとの両立をしながら管理職になった人がいない、などの理由で管理職になるのをことさら難しく感じてしまうケースも少なくありません。

そのように、メンターをはじめから“お手本になる人”とすると、社内でもメンター候補が限られてしまいます。また前述したように、メンター候補となる層の方たちは総じて忙しく、後輩の面倒をみることやメンターとしての役割を負担と感じ、敬遠されがちなこともよく耳にします。

 

4.メンター制度導入のポイント

メンターが、継続的にメンティーを支援していくことを「メンタリング」といいます。メンターは、OJT(On the Job Training)とは違い、仕事上のスキルを習得させることが主の役割ではなく、主にメンティーのメンタル面をサポートしていくことが主の役割になります。そのため、メンター制度を導入するために、まずはメンターとなる方をどのような考えで選抜していくかを整理しなければなりません。

メンティーの育成や成長に重点をおく場合には、仕事の内容を理解し、その割り振りなどにも権限を発揮できる職位が望まれますが、自律支援や離職予防を重視する場合には、数年程度先輩の方が効果的だと言われています。その場合は、直属の先輩関係でない方が良い関係を築きやすいと思います。いずれにしても大切なのは、お互いに信頼関係を築ける相性となるため、職務経験や年齢だけでなく、性格傾向や面倒見の良さなどの面も考慮したメンターの選出とメンティーとのマッチングを慎重に行うことが成功のための重要な要素になると考えます。

また社内にメンター制度を導入できない場合には、外部のキャリアカウンセラーを活用するのもひとつの方法であると思います。社外の人であるからこその安心感で気兼ねなく心の内を話せる点は強みになると思います。

 

5.メンター制度はメンターの成長の機会にもなる

ある自治体で新人研修とメンター対象者の研修を担当させていただいた経験があります。メンターの皆さまには、メンティーの状況に応じた関わり方の違い(ティーチング・カウンセリング・コーチング)を学んでいただき、それぞれのスキルについてロールプレイングを通じて習得していただきました。最初は、メンターになることを負担に思われているような印象もありましたが、必要なスキルを身に付けたことが自信となり、加えて新人の皆さんが研修で頑張っていたことやメンターをとても頼りにしていることなどを伝えると役割意識も芽生えたように感じました。

メンターに最初から過大な負担を与え過ぎず、自身にも成長してもらう機会として取りいれていただくと上手くいきやすいと感じます。メンター研修のフォローアップでは、「教えているつもりが教えられていることの方が多い」「新人の頑張りに自分も励まされる」との気付きも多く、メンター制度は実はメンターの成長にも大きな役割を果たしているといえます。

 

6.最後に

キャリア形成は点ではなく線で繋がっていくため、メンタリング機能とメンターの存在は、メンタル不調を未然に防ぐだけでなく、モチベーション維持のために大変重要であると考えています。組織がキャリアパスを示し、キャリア形成支援を行うことで、一人ひとりが長期的なキャリアビジョンをもち、仕事のやりがいの発掘とともに帰属意識を高めることも期待できます。

私が代表を務める株式会社abilight(アビライト)では、このような私自身の10年以上にわたる講師経験から得た実感と学術理論を組み合わせて、キャリアパスの設計から研修教育体系の構築と実施、キャリアカウンセリングによるフォローといった、組織から個人までを一貫したサービス提供を行っています。一人ひとりがいきいきと働くためのキャリア支援が組織の活性化に繋がると考えるからです。

改めて考えると、私たちは生きる上で多くの時間を働くことに費やしています。働く時間をできるだけ前向きに過ごすことは、満足できるキャリアを創る上で大切な要素になります。これからも微力ながらそのためのお手伝いをしていきたいと思っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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